給与は労働の対価 就業規則を確認しよう
就職・転職活動の際、まず確認するのが毎月の給料(基本給)の額や賞与の有無でしょう。
給料は①毎月1回以上②一定の期日に③労働の対価として支払うよう労働基準法で定められています。
支給基準は働く時間や休日などと合わせて、会社ごとに就業規則で定めています。
ちなみに、民間企業に賞与を支払う義務はありません。
慣行で支給する会社、就業規則で支給基準を決めている会社が多いですが、賞与の制度がない会社もあります。
給料に各種の手当を加えた総額が給与です。
給与以外にも、会社は一定の福利厚生を社員に提供する義務があり、その費用も支払っています。
会社員のメリット・デメリットとは?
収入の安定だけでなく、福利厚生が手厚いのも会社員のメリットです。
1.メリット
- 収入が安定している
- 時間外や深夜の労働などに手当がある
- 労働時間、休日が規則で決まっている
- 有給休暇がある
- 住宅ローン、自動車ローンなどの審査に通りやすい
- 社会保険料の一部を会社が負担
2.デメリット
- 固定給が基本なので、成果を上げてもそれに見合った収入増はあまり期待できない
- 会社の方針に従って仕事を進めるので、仕事上の自由度は少ない
- 倒産やリストラで職を失うことがある
会社員が加入する社会保険は4種類
1.労災保険
仕事中や通勤中の事故・災害によるケガや病気の治療費、会社を休んで給料をもらえないときの休業補償、死亡した場合の遺族年金などが給付されます。
保険料は全額会社が負担しています。
2.雇用保険
失業したときのほか、育児や介護のために休業して給料をもらえないときに給付を受けられます。
保険料は業種によって会社と従業員の負担割合が異なります。
3.健康保険
労働災害ではない病気やケガの治療費の保障、会社を休んで給料をもらえないときの手当金の給付があります。
40歳になると介護保険にも加入し、介護が必要になったら給付が受けられます。
保険料は健康保険、介護保険ともに原則として会社が半額負担します。
4.厚生年金保険
老後に年金を受け取れます。
障害者認定されると障害年金、死亡時には遺族に遺族年金の給付もあります。
保険料は、原則として会社が半額負担します。
会社員はとにかく保障が手厚い
たとえば、年金について、会社員であれば国民年金に加えて厚生年金に会社が保険料を半分を負担する形で加入できるほか、扶養されている場合は配偶者も第3号被保険者として保険料の納付の必要はなく、国民年金に加入できます。
将来の年金の受取額に大きな差が出てくるので、30から40歳代の個人事業主としての収入が会社員時代に比べて多くても、長い目で見れば、ずっと会社員でいたほうが、収入金額が多くなる可能性があります。
○年金受給額の違い
※会社員は平均月収20万円の40年間、配偶者の国民年金は第3号被保険者としての受給分、自営業者の国民年金は加入期間40年の満額支給の場合で試算。
金額はあくまでも概算のため、参考程度に。
○会社員ならではの年金
厚生年金の加入者である会社員は65歳以降の年金に厚生年金が上乗せされるほか、「生計を維持している配偶者や子ども」がいるときに加給年金が加算されたり、配偶者の年金に振替加算(昭和41年4月1日生まれ以前のみ)が上乗せされることもあります。
会社員の年齢別平均給与
民間企業の正社員と非正規雇用の社員(契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど)を合わせた平均給与を示しています。
○年齢階層別の平均給与
出典:国税庁「令和元年分民間給与実態統計調査-調査結果報告-」
会社員は50代前半が収入のピークになっています。
なお、35歳以上の女性の平均給与が低くなっていますが、これはパートなどの非正規雇用の社員が多いためです。
パートやアルバイトは従業員に含まれる?
一般的に従業員とは、お店や会社で雇われている=雇用契約を結んでいる労働者を指します。
パートやアルバイトも雇用契約に基づいて働いているため、従業員に含まれます。
ちなみに、会社の役員は「雇っている側」なので従業員に含まれません。
パートやアルバイトでも5年連続勤務すれば正社員の可能性もある
正規の社員・職員になりたいけれど、現在は契約社員などの非正規で働いているという人は、現職で頑張り続けるのも1つの方法です。
パートやアルバイト、有期雇用の契約社員、派遣社員が対象の「パートタイム労働法」や「労働契約法」の改正で、有給休暇、教育訓練、5年連続勤務で無期労働契約への転換など、待遇が改善されている部分もあるので認識しておきましょう。
有給休暇はどれくらいもらえるのか
1.有給休暇とは
一定期間勤続した労働者に対して付与される休暇のことで、取得しても賃金が減らされない休暇のことです。
入社後6ヶ月経過し、全勤務日の8割以上出勤したことが条件となっています。
有給休暇(年次有給休暇)は十分な休養を取って心身の健康を維持することが目的です。
付与日数は所定労働日や勤続年数によって、下記の通り異なります。
ただ、有給休暇の実際の取得率は厚生労働省の調査によると約5割程度となっています。
継続勤務 年数 |
6ヵ月 |
1年 6ヵ月 |
2年 6ヵ月 |
3年 6ヵ月 |
4年 6ヵ月 |
5年 6ヵ月 |
6年 6ヵ月 |
付与日数 |
10日 |
11日 |
12日 |
14日 |
16日 |
18日 |
20日 |
週の所定労働日数 |
年間の所定労働日数 |
6ヵ月 |
1年 6ヵ月 |
2年 6ヵ月 |
3年 6ヵ月 |
4年 6ヵ月 |
5年 6ヵ月 |
6年 6ヵ月 |
4日 |
169~216日 |
7日 |
8日 |
9日 |
10日 |
12日 |
13日 |
15日 |
3日 |
121~168日 |
5日 |
6日 |
6日 |
8日 |
9日 |
10日 |
11日 |
2日 |
73~120日 |
3日 |
4日 |
4日 |
5日 |
6日 |
6日 |
7日 |
1日 |
48~72日 |
1日 |
2日 |
2日 |
2日 |
3日 |
3日 |
3日 |
2.有給休暇の有効期間
有給休暇の有効期間は2年間です。
そのため、前々年分の未取得分の有給休暇は消化できません。
また、繰越分と本年分の有給休暇をどちらから取得するかは就業規則によって異なります。
有給休暇日数が残っていれば、病気で欠勤した時も給料を減額されないケースもあります。
ただ、事前に申請が必要な会社もあるので、有給休暇の消化のルールについて確認しておきましょう。
雇用形態が違っても業務内容や責任が同じなら待遇も同じ
働き方が多様化している現代では、制度面についても見直しや改正が進められています。
代表的なのは「同一労働・同一賃金」です。
これは正規社員と非正規社員について、賃金だけではなくほかの待遇についても不合理な差をなくす取り組みです。
正規社員とは一般的に所定労働時間上限まで働くフルタイム勤務で、期間の定めがない契約を結んでいる社員を指します。
しかし、ライフスタイルが多様化し、週3日、1日5時間働くといった働き方が今では珍しくありません。
また、契約社員や派遣社員、パートなど雇用形態はさまざまです。
業務内容や責任の程度が同じであれば、非正規雇用であっても待遇差があってはならない、というのが同一労働・同一賃金の考えです。
賃金だけでなく、非正規であっても健康保険や雇用保険など各種制度が適用されます。
また、派遣社員も同一労働なら同一賃金の対象となります。
同一労働・同一賃金とは?
正規社員 |
無期雇用契約を結んでいる(原則として定年まで働く)フルタイム勤務(所定労働時間働く)の従業員のこと |
非正規社員 |
契約社員や派遣社員、短期アルバイトやパートなど |
正規と非正規の社員の不合理な待遇差をなくすことです。
均等待遇 |
均衡待遇 |
|
内容 |
差別的取り扱いの禁止 |
不合理な待遇差の禁止 |
詳細 |
同一労働の場合、同一の待遇を行い、差別的な取り扱いは許されない。 |
同一労働ではないために待遇に差があっても、その差が不合理であってはならない。 |
例 |
通勤手当、食堂の利用、安全管理などは契約期間や労働時間に関係なく与えられる。 |
正規社員にはノルマや責任が課せられている。 |
待遇内容 |
同一の支給をする |
ノルマや責任に応じて合理的に支払う |
※待遇が異なる場合は、合理的な範囲:通勤した日数分の通勤手当、転勤手当の有無など
2.事業主の説明義務
事業主は非正規社員に対して、待遇内容の説明を行います。
待遇決定に関しての考慮事項や待遇差の内容・理由を説明します。
説明の際、「今までそうだから」「パートだから」「契約社員だから」などのあいまいな説明は認められません。
非正規社員も保険制度の対象になる
雇用期間・勤務時間 |
健康保険・介護保険・厚生年金保険 |
労災保険 |
雇用保険 |
||
従業員501名以上 |
従業員500名以下 |
||||
2ヵ月を超える雇用 |
週30時間以上 |
○ |
○ |
○ |
○ |
週20時間~30時間未満 |
○ |
△ (※1) |
○ |
○ |
|
週20時間未満 |
- |
- |
○ |
- |
|
2ヵ月以下の雇用 |
1ヵ月~2ヵ月の雇用 |
- |
- |
○ |
△ (※2) |
1ヵ月未満の雇用 |
- |
- |
○ |
- |
※1:労使の合意があれば対象
※2:週の勤務時間が20時間未満の場合は加入対象外
※このほか、75歳未満、70歳未満などの個別の条件もあり
非正規社員であっても、上表のとおり条件を満たせば各種の公的保険に加入できます。
労災保険はすべての労働者が対象で、雇用保険も2ヵ月を超える労働者なら原則加入対象となっています。
派遣社員は2種類のいずれかの方式で待遇を決める
同一労働・同一賃金の均等な待遇は派遣社員にも適用されます。
派遣社員の待遇は働く職場(派遣先)を基準とするか、派遣元との労使協定で決められます。
派遣先の企業は派遣元に派遣社員の待遇について情報提供する義務があります。
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