投資用の不動産物件を購入したら、まず加入する保険といえば火災保険と地震保険です。
そして、所有する施設・設備が、他人をケガさせたり、他人の所有物に損害を与えたりするリスクもあります。これらリスクをカバーする保険が、施設賠償責任保険です。
所有する施設で大規模な事故が発生した場合には、経営が立ち行かなくなるリスクも生じます。リスク回避を徹底したいオーナー（経営者）は、ぜひ加入すべき保険と考えておきましょう。
「施設賠償責任保険」とは
施設賠償責任保険は「施設の安全性の維持・管理の不備や、構造上の欠陥」や「施設の用法に伴う仕事の遂行」が原因となり、他人にケガをさせたり（対人事故）、他人の物を壊したり（対物事故）したために、被保険者（保険の補償を受けることができる人）が法律上の損害賠償責任を負担された場合に被る損害を補償する保険です。
日本国内において、保険期間中に発生した事故が対象で、保険金が下りるのは第三者に対する法律的な損害賠償責任が生じた場合に限られており、ここが火災保険や地震保険とは決定的に異なります。
代表的なケースとして挙げられるのが、所有物件の看板や外壁のタイル、ガラス等が落下して、通行人に怪我をさせてしまったり、通行中の車に損害を与えてしまったりした場合があります。
また、通行人や車以外にも入居者や入居者の所有物も対象となります。
したがって、室内に釘などの突起物が出ていたために入居者にケガを負わせてしまった、給排水設備が水漏れを起こして家財を壊してしまったといった場合にも賠償金が補償される。
「個人賠償責任保険」との違い
「施設賠償責任保険」と混同されることが多い保険に「個人賠償責任保険」があります。
「個人賠償責任保険」は自分や家族が他人にケガを負わせてしまったり、他人の物を壊してしまったりといった損害を与えてしまった場合を対象としています。
これに対して、「施設賠償責任保険」は所有物件そのものが他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりしたり、損害を与えてしまった場合が対象となります。
「施設賠償責任保険」と「個人賠償責任保険」のどちらが適用されるか誤解されやすい例として挙げられるのが水漏れの場合です。
入居者自身の不注意などによって水漏れを起こし、階下の人や物に損害を与えた場合には、入居者自身が加入している「個人賠償責任保険」で賠償してもらうことになります。
しかし、入居者に過失がなく、施設そのものの不備によって水漏れが起こり、損害を与えた場合には、物件のオーナー加入している「施設賠償責任保険」によって賠償することになります。
ただし、補償されるのは法律的な損害賠償責任が生じた場合に対してのみということになるので、水漏れの原因調査や配管の修理費用などは対象外になります。
施設賠償責任保険の補償内容・補償範囲は？
一般的な施設賠償責任保険の補償内容・範囲は、主に以下の4点になります。
１．被害者への損害賠償金
被害者に対する治療費、また被害者の所有物に対する修理費用を補償します。
２．事故発生直後における応急措置費用
事故発生当時において、被害者の応急措置等に要した費用を補償します。
３．以後の事故の発生・拡大を防ぐために必要な費用
事故の発生を防止するため、または拡大を防止するために必要だった費用や有益だった費用について、補償します。
４．裁判などにかかった費用
被害者との裁判となった場合、訴訟費用や弁護士報酬等について補償します。
施設賠償責任保険加入時の注意すべきポイント
すべての加害事例が補償されるわけではないことと自社に責のある加害事例については全てが補償対象となるわけではありません。
たとえば、給排水管からの漏水で他人の器物に損害を与えた場合、補償の対象外となります。
施設賠償責任保険は、あくまでも施設の安全性の維持・管理不備・構造上の欠落によるものが補償対象となるのです。
このように施設賠償責任保険だけでは補償対象をカバーしきれないので、包括的な賠償責任保険をプラスして加入するか、または、補償対象の範囲に加えたい事象について、特約を付ける必要があります。
施設賠償責任保険の魅力とは？
施設賠償責任保険は保険料が安いのが特徴の保険商品です。
補償内容にもよりますが、最大補償額を1億円に設定しても、保険料は1年あたり1,000円〜数千円というのが一般的です。
低いコストで万が一に備えておけるため、加入しておいて損はありません。
定期的に所有物件の保守点検を行うことが大前提ではありますが、手元資金ではカバーできないアクシデントは、不動産投資の最大のリスクといえます。
何の備えもせず、万が一のことが起きてからでは遅いので、そのリスクを未然に防げる施設賠償責任保険が果たす役割はリスク回避に必要なものといえるでしょう。
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