日常生活中に偶然他人にケガをさせてしまったり、物を壊したりすることは起こり得ることです。
しかも事故によっては賠償額が非常に高額になることもあるので、「自分には関係ない」と思ってしまうのはかなり危険かも知れません。
日常生活の中に潜む損害賠償リスクはどのようなものがあり、また、そのリスクに対して保険はどこまでカバーできるのでしょうか。

家計へのダメージが大きい「損害賠償」
家計が負う可能性のある経済的なダメージで、最大のものは「損害賠償」です。
他人に損害を与えて法律上の損害賠償責任を負うことになると、数千万円を超す高額の損害賠償請求を受ける可能性があります。
しかもこうした事故は、事前にどのような損害がどの程度生じるか、予測できません。
たとえば、過失から水漏れを起こし、階下の住宅に被害を与えて修理費を請求されるケース。
飼い犬が他人に噛みつき、ケガを負わせるケース。
自転車による交通事故を起こすなどで治療費を請求されるケース。
このケースでは自動車保険は、自動車を運転しているときの損害賠償等を補償するものなので、自転車走行中に生じさせた相手への損害賠償は自動車保険ではカバーされません。
重大な過失による火災で、隣家に被害を及ぼし、被害弁償を請求されるケースなどがあります。
このような賠償請求が実際に起きています。
親の認知症事故による損害賠償請求
高齢化が進むなか、新たな問題も生じてきています。
認知症などで、加害者が自身の行為が違法かを認識できる能力がない、すなわち責任能力がないとされるときは、本人が法律上の損害賠償責任を問われることはありません。
しかし、このような場合、本人の監督義務を負う親族などが、損害賠償を請求される可能性があります。
2025年には、認知症の患者が700万人に達するとみられています。
これは高齢者の5人に1人の割合ですから、誰でも他人ごととはいえない水準です。
予期せぬ事態で、数千万円を超える賠償金を負担する事態は、あまりにも過酷です。
個人賠償責任保険とは
このような事態に備えとなりうるものが「個人賠償責任保険」です。
日常生活上で他人にケガを負わせたり、他人のモノを壊すなどの実損害を与えたりして法律上の損害賠償責任を負ったとき、被害者に支払う損害賠償金や弁護士費用などをカバーします。
また、自分が加害者になった場合だけでなく、親族などの監督義務者として負うことになった損害賠償についても対象になります。
個人賠賠償責任保険の特徴として対象となる人の範囲が広いことが挙げられます。
「示談代行サービス」が付いた商品もあります。
事故後の被害者との示談交渉のやり取りを、保険会社が代行してくれるサービスです。

個人賠償責任保険の契約方法
契約する方法は、自動車保険や火災保険、傷害保険や各種の共済などに、「特約」として付加するのが一般的です。
忘れているだけで、実はすでに加入している保険で契約済みということもありますから、一度確認をしてみましょう。
クレジットカードでも、会員向けサービスとして保険を提供していることがあります。
補償の範囲は、契約した保険金額が上限になります。
高額賠償に備えられるよう、「1億円」や「無制限」といった設定をおすすめします。
保険料は、それでも年間数千円程度。これで一家をカバーできます。
ただし、カバーできる家族の範囲は契約する商品によって異なることがあるので注意が必要です。
同居の家族に加え、下宿中の子が起こした事故による損害賠償請求までカバーできるものや、最近は、高齢の親が事故を起こして、別居中の子に請求された損害賠償まで補償するものも出てきています。
補償を確実にするためには、一家で一契約しておくのが無難でしょう。
個人賠償責任保険の注意点
- 個人賠償責任保険は単独で入ることはできず、他の保険の特約になる
- 他の保険に特約となっているので個人賠償責任保険の加入が二重にならないようにする
- 自動車保険や火災保険、傷害保険などの主契約を解約するとき、特約の個人賠償責任保険も解約となるので注意する
- 以下のように個人賠償責任保険の対象とならないケースがあるので注意する
- 職務の遂行中の賠償事故
- 車両(船舶・航空機等も)の所有や使用・管理により発生した事故
- 闘争行為
- 他人から借り物を壊した場合の賠償事故
- 同居の親族に対する損害賠償 など
現在加入している個人賠償責任保険をチェック
認知症の親の事故が社会問題となって以来、監督義務者となる家族の責任が「リスク」として認識されるようになっています。
このようなケースでも備えられるように個人賠償責任保険の改定が相次いでいます。
しかし、改定前の契約は、満期まで改定前の内容になりますので改定したから安心と思い込むのは危険です。
また、特約によっても補償内容が異なるため、個人賠償責任保険に入っているから安心とはいえません。
補償内容の確認を怠らないように注意しましょう。
仮に認知症の親が事故を起こし、その監督義務者が自分であるときに備える補償を想定した場合、個人賠償責任特約に関して次の点を確認しておくと安心です。
- 監督義務者である自分が確実に被保険者となる個人賠償責任保険に入っている
- 親と別居で親が入っている個人賠償責任保険で補償する場合、事故を起こした被保険者が責任無能力者のときに監督義務者となる別居している親族などが補償対象になる商品である
- 誤って線路内に立ち入ったことによる損害も補償される
- 事故によっては高額賠償となる可能性もあるため、賠償責任の額はできれば無制限となっている(最低でも1億円)
- 示談交渉サービスの有無を確認する
- 自分が被保険者になる個人賠償責任保険に2つ以上入っている場合は1つに絞る
その他にも自転車事故をはじめ、日常生活の賠償責任に備えられる個人賠償責任保険。
補償内容をしっかり確認して入っておきましょう。
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