健康保険や年金の手続き無収入なら失業給付を申請
長い人生には独立・転職のために自分の意思で、勤務先の業績不振によるリストラで会社を辞めることもあるでしょう。
健康保険や年金は退職後の立場により加入する制度が異なるので、退職時には手続きが必要です。
次の仕事が決まっていないときは、雇用保険から一定期間失業給付(基本手当)をもらえます。
雇用保険は、正社員だけでなく31日以上雇用の見込みがあるアルバイトなども対象です。
自分は対象外と思い込まずに確認をしましょう。
また、これまで給与から天引きで会社任せだった税金や社会保険料の支払いも、退職後は自分で納付しなければならないケースもあります。
退職したときに会社からもらう書類
退職後のさまざまな手続きに必要なので必ず受け取っておきましょう。
- 年金手帳(会社が保管していた場合)
- 雇用保険被保険者証(会社が保管していた場合)
- 雇用保険被保険者離職票(退職時に受け取る)
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票(退職金をもらった場合)
1.退職金制度のある企業
退職金は福利厚生の一環です。
最近では企業が掛け金を出し、従業員自身が運用を行う企業型確定拠出年金を利用する企業が増えています。
また、今後は退職金制度を設ける企業が減っていきそうです。
○退職金制度導入企業の割合
大企業は雇用労働者数1,000人以上、中企業1は300~999人、中企業2は100~299人、小企業は30~99人と区分。
確定拠出年金の人は運用次第で退職金の額が変動します。
なお、勤続年数が短い場合、退職金の金額はそれほど期待できません。
失業給付金はどのように手続きをしたらもらえるのか
失業給付を受けられるのは、すぐに再就職する意思があることが条件となります。
定年退職後も働く意思があれば受け取ることができます。
なお、病気やケガなどで、すぐには働けない人、公務員を辞めた場合は受け取ることができません。
○手続きの流れ
給付金がもらえるのは離職の翌日から原則1年までなので、手続きはなるべく早くしましょう。
失業給付は被保険者期間1年以上が対象
1.給付日数
就業(被保険者)期間が長いほど、給付日数は増えます。
なお、自己都合で退職した場合と、会社都合で退職した場合では、被保険者期間の条件と給付日数が異なるので注意が必要です。
被保険者期間 |
1年以上10年未満 |
10年以上20年未満 |
20年以上 |
全年齢共通 |
90日 |
120日 |
150日 |
年齢/被保険者期間 |
1年未満 |
1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
30歳未満 |
90日 |
90日 |
120日 |
180日 |
- |
30歳以上35歳未満 |
120日 |
180日 |
210日 |
240日 |
|
35歳以上45歳未満 |
150日 |
240日 |
270日 |
||
45歳以上60歳未満 |
180日 |
240日 |
270日 |
330日 |
|
60歳以上65歳未満 |
150日 |
180日 |
210日 |
240日 |
2.支給額
辞めた日の直前6ヶ月の賃金÷180日の50~80%(年齢と金額による)が「基本手当日額」となります。
例:月給21万円の場合
21万円 × 6ヶ月 ÷ 180 = 7,000円
7,000円の50~80%は3,500~5,600円(※)
90日支給なら315,000円~504,000円が支払われます。
※年齢ごとの上限あり
退職後の進路により健康保険や年金の手続きが異なる
健康保険、年金は、退職後の進路によって手続きする場所が異なります。
基本的には本人が行いますが、代理人が手続きする場合は、委任状が必要です。
○退職後の健康保険・年金の手続き
1.退職後「無職または個人事業主」になる場合
【住んでいる市区町村役場で手続き】
国民年金や国民健康保険への切り替え手続きを行います。
国民年金は月単位で保険料を納めるため、空白期間が生じると未納扱いとなり、将来の受給額も減るので、早急に手続きをする必要があります。
(1)国民健康保険に加入
住民票のある自治体の国民健康保険に加入して、自分で保険料を支払います。
元の会社の健康保険の任意継続も可能です。
必要なもの
- 退職日が証明できるもの
- 身分証明書
- 印鑑
手続きは退職した日から20日以内に行います。
(2)国民年金(第1号被保険者)に加入
手続きをしないと、一定期間が過ぎたところにまとまった金額が請求されることもあります。
なお、2年以内であれば後納もできます。
必要なもの
- 退職日が証明できるもの
- 身分証明書
- 年金手帳
- 印鑑
手続きは退職した日から14日以内に行います。
2.退職後「結婚や学生になるなどで家族の扶養に入る(所得制限内でパート・アルバイト)」
になる場合
【家族の勤務先で手続き】
会社員の家族(親・配偶者など)の扶養に入る場合は、家族は扶養に入れてから5日以内(結婚した場合は婚姻届を提出した日)に勤務先に必要書類を提出します。
必要なもの
- 健康保険被保険者(移動)届け
- 国民年金第3号被保険者該当届(健康保険被扶養者届の3枚目)
- 年金手帳
- 印鑑
手続きは扶養になって5日以内に行います。
(1)家族の健康保険に入る
保険料の支払いなしで保障が受けられます。
ただし、失業給付をもらっていると収入があるとみなされるので、基本手当日額が3,611円を超える人は加入できません。
(2)国民年金(第3号被保険者)に加入
結婚していて配偶者が会社員(第2号被保険者)なら、第3号被保険者として保険料の負担なしで国民年金に加入できます。
3.退職後「別の会社に転職」する場合
【次の勤務先で手続き】
入社後、総務に必要書類を提出します。
必要なもの
- 雇用保険被保険者証
- 健康保険被扶養者(異動)届(扶養義務がある場合)
- 源泉徴収票
- 年金手帳
- 印鑑
退職した会社の健康保険は2年間継続できる(任意継続)
退職した後も2年間は任意で前職の健康保険に継続して加入できますが、全額負担となるため保険料は約2倍になります。
○任意継続の保険料の概算方法
※1:協会けんぽの場合。元組合健保の場合は「退職前の標準報酬月額」と「勤務先の標準報酬月額」のどちらか安い方
※2:協会けんぽ(東京都)の保険料率(令和2年4月時点)
国民健康保険(自治体により金額が異なる)と比べてどちらがおトクか判断して加入先を決めましょう。
○30歳、標準報酬月額240,000円、協会けんぽ(東京都)加入の場合(令和2年4月時点)
条件 |
社会保険の資格喪失以前、継続して2ヶ月以上の被保険者期間がある |
手続き場所 |
健保組合または協会けんぽの都道府県支部 |
申請期限 |
退職した日から20日以内 |
必要なもの |
|
加入期間 |
2年間 |
国民健康保険の減免
1.倒産や解雇で失業した場合は国民健康保険料が軽減される場合もある
倒産や解雇など自分では望まないのに失業者場合は、国民健康保険料が軽減されるので、任意継続よりも安くなるケースもあります。
適用対象かどうかは自治体に確認します。
2.退職(失業)して国民年金の保険料を支払えないときは免除してもらう
住民票のある市区町村に届け出れば、免除(免除期間分、将来の年金は8分の7から2分の1に減る)や猶予(猶予期間分も加入期間にカウントされるが将来の年金はゼロ)が受けられます。
いずれも10年以内なら追納することで年金額を回復できます。
退職する月の給料が激減するのはなぜか
住民税は1~5月に退職すると、前々年の未納分を退職時の給料から一括天引きされます。
前年分は退職後に自分で納付します。
6~12月に退職と、前年分の残りを退職時に給与から一括天引きするか、退職後に自分で納付するかを選べます。
所得税は、年内に再就職すれば再就職先で年末調整して支払うことになります。
なお、翌年まで失業状態なら自分で確定申告をする必要があります。
コメント